毎日、新聞を読むの大変ですよね。ビズネス会話で使えるトピックを短時間で把握したい方、必読です。1日1つ日経新聞から記事をピックアップして関連知識を解説します。7日分で約7分で読めます。短時間で『知ってるビジネスマン』に変身しましょう! 今週は地球温暖化に関する記事が印象的でした。
【執筆】松本タケル〔ペンネーム〕 大手企業で特許戦略に携わる弁理士。法律だけでなくネットワークスペシャリスト、情報セキュリティスペシャリスト・エンベデッドシステムスペシャリストの資格を有しITにも精通。TOEIC 850点。趣味はスキルアップとビジネスに役立つ知識を収集すること。
*PEST分析(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術))のいずれに該当するかを明示しています。
雇用カルテル 米が摘発
雇用カルテル 米が摘発
2021年8月9日(月) 日経新聞朝刊
米司法省(DOJ)は賃金と人材引き抜きに関するカルテルを相次いで摘発。
DOJは20年12月、理学療法士などの賃金を低く抑えるように他社と共謀したとして、米ヘルスケア企業の元オーナーを刑事告発した。
【Politics(政治)】カルテルは、企業間で商品価格や数量を決めてしまう行為に適用するのが一般的です。談合ですね。しかし、今回は適用の範囲が広がっていることを表しています。引き抜きを禁止すると共謀して賃金を低く抑えることができるとい点が問題になっています。
記事によると日本も無縁ではなく、採用や給与決定の独立性を確保し、意思決定の過程を記録しておくことが大事とのことです。
日本での事例ではありませんが、日本でも昔より人材の流動性が高まっています。同様の取り締まりが行われても、問題が起きないように人事制度を見直しておく必要があるかもしれません。
気温1・5度上昇 10年早く
気温1・5度上昇 10年早く
2021年8月10日(火) 日経新聞朝刊
IPCC報告「21~40年に」
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021年~40年に1・5度に達するとの予測を公表した。18年の想定より10年ほど早くなる。
【Society(社会)】気候変動対策が待ったなしであることを示す記事です。新たに北極圏のデータも活用したところ10年早まったそうです。
温暖化の影響は多方面に渡ります。北米で大規模な山火事が起こっています。永久凍土が溶け出しており、海面上昇もしています。それに伴い、水害も増加しています。気温上昇を1・5度に抑えても2100年には、海面がいまより0・28~0・55メートル上昇するとの予測です。
猛暑が増えると熱波による死者が増えます。また、建設業などの屋外作業が必要な業種で効率が大幅に低下し、経済損失が発生します。本記事は【Society(社会)】に分類しましたが、Politics(政治)、Economy(経済)、Technology(技術)の全てを総動員して対応していくべき課題です。
将来の人々に環境的な負債を残さないように、世界中で考えていく必要があります。
独車生産 EV・PHV2割
独車生産 EV・PHV2割
2021年8月11日(水) 日経新聞朝刊
5月に突破 各社、工場の転換加速
今年、5月にはドイツ国内で生産された乗用車に占めるEVとプラグインハイブリッド車の比率が初めて2割を突破した。
環境対応の加速が進んでいることを示しています。これを遠い他国のことだと考えてはいけないとおもいます。
ドイツはEVシフトが他国より相当、速いです。販売データから推定すると、EVなどの新エネルギー車(NEV)の割合は、中国は9%、日本は1%、米国は2%(日経新聞が販売データから推定)とのことです。
モノの生産は、大量に生産すると経験的効果でノウハウが蓄積され、生産コストが下がったり、品質が工場するなどのプラス面があります。これが企業の見えない資産になります。
電動化に大きく舵を切ったドイツ車メーカーは、早期にノウハウを蓄積していくことになります。日本の車メーカも環境対応の方針を打ち出してはいるものの、現在は大部分が旧来のエンジン車を生産しています。様子見をしている間に置いてけぼりにならないことを祈ります。
新規上場「値決め」調査
新規上場「値決め」調査
2021年8月12日(木) 日経新聞朝刊
公取委 欧米より少額調達 注視
公正取引委員会は新規株式公開(IPO)時に企業が適切に資金調達できているかの調査を始めた。
日本ではIPOをする際に主幹事となる証券会社の力が強く、独占禁止法での優越的地位の乱用になる可能性があるとのことです。このような部分にまで独禁法の調査が入るようになってきたことを私は知りませんでした。
アメリカでもヨーロッパでも最近、独禁法の適用にかんするあらたな動きがでてきています(別の記事で紹介しています)。各国の独禁法の適用の動きはビジネス上、注視が必要と思います。
日本ではIPO時の株式の7割が個人投資家が買います。しかも、公示価格から上がることを期待して初値(公開初日の取引開始時)に売り抜けるケースが多いです。という、筆者もIPOにときおり申し込みますが、抽選になる場合がほとんどで当たったことはありません。
日本はスタートアップが育っておらず、IPOでの調達も諸外国よりも定額です。もっと、本質的な問題から取り組むべきと感じます。
パナソニック 家電、機能詰め込み脱却
パナソニック 家電、機能詰め込み脱却
2021年8月12日(木) 日経新聞朝刊
アイリスオーヤマなどに対抗
パナソニックは機能を絞り込み、価格を抑えた炊飯器や電子レンジを販売する。
単に機能を抑えるだけでなく、発展性を持たせた商品を販売する点が注目です。基本機能しかない電子レンジを販売し、凝った料理がしたい人は、グリル皿などを別途購入し、グリルなどのモードをダウンロードして機能を追加するそうです。
進化する家電といえます。ハーバード・ビジネス・スクールの教授だった、クレイトン・クリステンセン博士の「イノベーションのジレンマ」という書籍が過去に、話題になりました。このイノベーションのジレンマが、まさに日本の家電メーカーが行ってきたことです。既存企業が既存技術の改良をするばかりで破壊的なイノベーションを起こせない(そういう企業に瞬時に追い抜かれる)というものです。
同書籍が日本で発売されて20年以上経ちます。やっと、日本企業の考えが変わってきたのかもしれません。我が家ではティファールのポットを使っていますが、温度調整はありません。そのかわり、あっという間にお湯が沸きます。十分使えます。どういった機能が望まれるかは、細分化が進んできます。要望にすべて答えると、開発品種数が多くなってしまいますが、今回のパナソニックのように、ベース機種を用意し、それを個人にカスタマイズするのは良いアイデアだと思います。
太陽光遮り「地球を冷ませ」
太陽光遮り「地球を冷ませ」
2021年8月13日(金) 日経新聞朝刊
温暖化対策、気候操作に危うさ
地球を丸ごと冷ませー。温暖化の脅威をよそに、荒唐無稽にも思える研究が世界で始まっている。
米ハーバード大学が中心のプロジェクトは、高度20キロメートルの成層圏に炭酸カルシウムの粉末をばらまく計画を練る。
【Technology(技術)】粉末を大気中に散布して、太陽光を弱めて温暖化を防止するための研究です。
1991年に起こったフィリピンでの火山噴火で平均気温が0・5度下がったそうです。それが1つのヒントになっているそうです。
待ったなしの温暖化対策ではありますが、危険をはらむ研究にも感じます。人間の活動により、温暖化が進んでいる側面は無視できません。
一方、さらに人間が気候をコントロールするようなことをすると、予測できないような事態に陥る可能性があります。
様々な対策の選択肢を持つために、研究は大いに歓迎します。しかし、実際の適用となると倫理面での検討、人々のコンセンサスを無視することはできないでしょう。
調達網の人権侵害 排除
調達網の人権侵害 排除
2021年8月15日(日) 日経新聞朝刊
世界標準 官民で対応
強制労働などの人権侵害がサプライチェーン上でないか、日本企業が取引先の調査を強化する。
【Politics(政治)Economy(経済)Society(社会)】企業が人権侵害への対策や、予防策を講じる仕組みである、人権デューデリジェンスが強く求められてきています。
対策ができない企業は、ブランド棄損にとどまらず、市場から即材に退場となる可能性があります。サプライチェーンの中に、児童労働・奴隷労働により生産されたものがあればそれを利用する下流の企業も責任を問われます。
生産の下流になるほど、多くの上流企業から素材や部品を購入するので把握が困難になります。日本では花王や、塩野義製薬が調査を開始したそうです。
欧州委員会は7月、企業に詳細な調査を要求する人権対応のガイダンス(指針)を発表したそうです。日本では東証のコーポレートガバナンスコードで人権尊重の規定が入りました。
海外主導で日本が後追いというのが、「またそのパタンか」と思う部分はあります。しかし、対策をしっかりすべき事項であることは間違いありません。