毎日、新聞を読むの大変ですよね。ビズネス会話で使えるトピックを短時間で把握したい方、必読です。1日1つ日経新聞から記事をピックアップして関連知識を解説します。7日分で約7分で読めます。短時間で『知ってるビジネスマン』に変身しましょう! 今週は日本の強い部分、弱い部分の両面が示された記事を抽出しました。
【執筆】松本タケル〔ペンネーム〕 大手企業で特許戦略に携わる弁理士。法律だけでなくネットワークスペシャリスト、情報セキュリティスペシャリスト・エンベデッドシステムスペシャリストの資格を有しITにも精通。TOEIC 850点。趣味はスキルアップとビジネスに役立つ知識を収集すること。
*PEST分析(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術))のいずれに該当するかを明示しています。
中小の知財、契約で防御
中小の知財、契約で防御
2021年8月2日(月) 日経新聞朝刊
中小企業が大企業と連携した際、知らぬ間に知的財産を吸い上げられてしまう問題を防ぐ動きが出てきた。
【Politics(政治)】中小企業庁が大企業と中小企業との円滑な関係のために「知的財産取引に関するガイドライン(指針)」を策定したとのことです。合わせて契約書のひな形も示しています。
これまで大企業が中小企業の技術やノウハウを吸い上げようとする動きが事実としてありました。このような行為は今後やりにくくなると思われます。
中小企業には新規ビジネスを起こすスタートアップも含まれます。スタートアップは大企業よりもスピディーに新しいビジネスを立ち上げることができます。大企業としてはスタートアップと連携したり出資をしたりして、その素早さを自社の価値につなげていく時代になっています。
そのためには、フェアに取引することが必須となります。大企業が下請けの中小企業からノウハウ等を奪うケースもあります。このようなことをした場合、取引調査員(下請Gメン)を通じて事業所名まで中小企業庁に伝わる可能性があります。また、公正取引委員会は「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」を出しています。
企業の社会的責任が叫ばれる中、このような事態は会社の存続に関わる可能性がありますので慎重な対応が求められます。
「修理の権利」米が後押し
「修理の権利」米が後押し
2021年8月3日(火) 日経新聞朝刊
スマホ・EV メカ―囲い込み是正
政権・競争促進へ監視強化
米国で、製品を販売するメーカー以外でも製品の修理ができる「修理する権利」の議論が高まっている。
【Politics(政治)】米国連邦取引委員会(FTC)は7月下旬にメーカーが修理を妨げているとして、メーカーへの監視を強化する方針を決定したとのことです。記憶を思い返せば10年以上前の携帯電話は、自分でバッテリーを変えることができました。今のスマホは自分で交換はできません。仮に個人が分解すると保証の範囲外となっていまいます。
一方、メーカー側でバッテリー交換をすると高額な料金がかかります。「それなら新品を買おう」と思う人も出てきます。スマートフォンやノートパソコンは小型でかつ、長時間駆動という相反する要求があります。そのためにメーカーは高密度に実装を行い、その結果、修理がしにくい設計になっているという側面はあります。
しかし、見方を変えると新品や高額なメーカーのアフターサービスに誘導しているともいえます。企業には社会的責任を果たすことが求められる時代になっています。この記事のような修理する権利が認知されると、「少々、筐体のサイズが大きくても修理しやすい製品を買おう」とか、「そのような書品を販売している会社を支持しよう」と考える消費者が増えるかもしれません。
円安頼み「貧しい日本」生む
円安頼み「貧しい日本」生む
2021年8月4日(水) 日経新聞朝刊
円の実力、48年前に逆戻り
11年に75円32銭の最高値を付けるまでの長期の円高は、輸出主導で成長した日本経済の重荷になってきた。最近は様相が異なる。企業は海外に生産拠点を移し国内からの輸出は減った。
【Economy(経済)】円安になったら輸出企業にとってメリット、それは日本経済へのメリットという時代ではなくなったということです。日本経済研究センターが15年の経済関連表から分析したところ、対ドルで10%円安になった場合は、国内生産額比で0・5%、デメリットが上回ったそうです。
15年のデータというのは少々古い印象はありますが、現在もこの傾向は同じと考えていいのでしょう。脱炭素やDXが進んだと想定してもこの傾向は変わらないとの予測です。
OECD(経済協力開発機構)によると主要国年収は00年以降、1~4割上昇していますが日本だけは横ばいとのことです。日本では賃金が上がっておらず購買力が低下してることが顕著に示されたといえます。
この状態に対して個人としてできることはあるのでしょうか。日本経済の地盤沈下を食い止める方法を考えていきたいものです。
低コストで5G技術輸出
低コストで5G技術輸出
2021年8月5日(木) 日経新聞朝刊
楽天、独社に2500億円で
楽天グループは自社で開発した低コスト通信技術をドイツの新興通信社に輸出する。「仮想化」と呼ぶ通信機器をクラウド上のソフトウェアに置き換える技術で、これを使う通信網の設計・運用を独社から一括で請け負う。
【Technology(技術)】赤字が続いている楽天の通信事業ですが、新たな稼ぎ方を進めています。将来的には技術供与で1兆円超の売り上げを目指すとのことです。
私は20年前になりますが、5Gの2世代前の3Gが開発される際にその半導体設計を行う技術者をしていました。当時は基地局の半導体はカスタム半導体で設計していました。処理量が多く、マイコンなどを使いソフトウェアで処理ができなかったからです。
その後、FPGAなどのハードウェアをソフト的に繋ぎ変える半導体に置き換えられていきました。楽天の仮想化技術はひと昔前では不可能だった通信の処理を完全にクラウドに置き換えるものです。テクノロジーの進歩の賜物といえます。
楽天はNTTドコモなどの大手キャリアの牙城を崩すことを期待され、第四のキャリアとして携帯電話市場に参入が許可されました。低価格が売りで事業としての利益を上げるのが難しいのですが、野心的な技術を導入することでB2Bのビジネスへの拡大が可能となっています。
携帯電話業界に限らず、古くから事業を行っている会社は思い切った新規技術の導入ができない場合が多くあります。自身の事業で利益が上がらなくても、そこで得たノウハウを他事業者に展開することで大きなリターンが得られる可能性があります。
アマゾンはもともと自前で使っていたクラウド技術をAWS(アマゾンウェブサービス)として外販することで大きな利益を得ています。このようなビジネスの判断は経営者の目利きと決断が重要です。末端の技術者でできない判断を経営者が行うことで会社が成長するか否かの分岐点になると感じます。
米、新車5割を電動に
米、新車5割を電動に
2021年8月6日(金) 日経新聞朝刊
30年目標、大統領令書名へ
電動車は「EV」「燃料電池車」「プラグインハイブリッド車」の3種類と位置づけ、HVを除外する。
【Politics(政治)】トランプ大統領時代と政策が大きく転換されました。米大統領が電動化の目標を示すのは今回が初めてです。
ただ、実効性は不明です。アメリカはガソリンが1リットル100円程度と日本よりも安く、大排気量の大型車が人気です。消費者視点で本当に買ってもらえるかは疑問が残ります。
ハイブリッド車(HV)は日本が得意な分野です。ハイブリッドは基本的にエンジン車で、モーターと小さなバッテリーで補助をする機構です。温室効果額低減の視点ではEVなどよりも劣ります。しかし、これが除かれたのはそれだけではなく、技術的に自国が得意ではないからなのかもしれません。
日本は2035年にガソリン車の新車販売をなくす目標を挙げています。しかし、HVの販売は認めています。
環境を全面に出しつつ、自国の利益が見え隠れします。いずれにしても、車業業界が大変革の時代を迎えているのは間違いないです。10年後に今の車メーカーのいくつかは市場から退場し、新興のEVメーカーなどが台頭している可能性はありますね。
医療体制の再構築急務
医療体制の再構築急務
2021年8月7日(土) 日経新聞朝刊
重症病棟、備え進まず
年初以降 上積み1000床とどまり
新型コロナウイルスの重症患者に対応する備えが進まなかったツケが膨らんでいる。
【Society(社会)】政府は重症病棟を確保した病院には1床あたり1950万円の補助金を出す政策を打ち出しているが、表題の程度しか増えていないとのことです。
これには、日本の医療の構造的な問題があります。日本は中小の病院が多く、集約化がしにくくなっています。
国が悪いとか、病院が悪いとかという問題ではなく、これは構造的な問題と言えます。病院も営利でやっている以上は利益が合わない場合は手を出しにくいでしょう。
病床が機動的に増加できれば、新型コロナウイルスの患者増にも耐えられます。1年半以上も何をしているのか? スピード感をもって検討が進められない日本の弱さを改めて感じます。
アンモニア 主役に名乗り
アンモニア 主役に名乗り
2021年8月8日(日) 日経新聞朝刊
2050年までに温暖化ガス排出の実質ゼロを目指す日本の切り札として、アンモニアへの注目が高まっている。燃やしても二酸化炭素を出さず、既にある輸送手段や貯蔵施設を使えるなどメリットも多い。
【Technology(技術)】前日の記事で日本の弱さを取上げましたが、今回の日本の明るい一面が示されています。この分野の技術開発は日本が先行しているとのことです。
アンモニアは水素と窒素でできており、火力発電に使う石炭に混ぜて燃焼させることができるそうです。また、アンモニアだけを燃やして発電するコストは、水素よりも安くできるそうです。さらに、水素よりも液化する温度が高く運びやすくなっています。
一方、生産設備が限られ急に量を増やせないデメリットがあるとのことです。水素技術は日本が優位と思われていましたが、諸外国も開発を進めています。一歩先のアンモニアでは日本が技術的に主導権が握れることを期待します。