毎日、新聞を読むの大変ですよね。ビズネス会話で使えるトピックを短時間で把握したい方、必読です。1日1つ日経新聞から記事をピックアップして関連知識を解説します。7日分で約7分で読めます。短時間で『知ってるビジネスマン』に変身しましょう! 今週は脱炭素の関連記事を多めみピックアップしました。
【執筆】松本タケル〔ペンネーム〕 大手企業で特許戦略に携わる弁理士。法律だけでなくネットワークスペシャリスト、情報セキュリティスペシャリスト・エンベデッドシステムスペシャリストの資格を有しITにも精通。TOEIC 850点。趣味はスキルアップとビジネスに役立つ知識を収集すること。
デジタル庁を「行革の星」に
デジタル庁を「行革の星」に
2021年7月19日(月) 日経新聞朝刊
VSR(ワクチン接種記録システム)は、デジタル庁の母体の内閣官房IT総合戦略室(IT室)が約50名のメンバーを集め、ほぼ2か月という異例の短期間で開発した。
論説記事ですが日本のデジタル化に明るい兆しを感じたので紹介します。VSRは通常は1年かかるところを6倍のスピードで開発がされたそうです。民間からも公募で人を集めています。とくに最新のクラウド技術は民間の力を借りる必要があります。
接種への報酬も工夫ています。菅総理の目指した100万回/日の接種には全国10万のクリニックの半分が1日20回接種する必要があったそうです。そこで、1日20回、1週間で100回接種すれば1回あたりの報酬単価をほぼ倍にする仕組みを導入したそうです。これにより接種が一気に加速したそうです。
9月1日にデジタル庁が発足します。この記事は前身の組織の成果を取り上げています。
台湾でデジタルを政府側で推進するオードリー・タン氏がオリンピック開会式で来日する予定だったのがキャンセルされて少々残念ですが、先進する国を分析して霞が関に風穴を開けて欲しいですね。
コロナ抗体カクテル承認
コロナ抗体カクテル承認
第4の治療薬、重症化抑制厚生労働省は19日、中外製薬の新型コロナウイルス向け治療薬「抗体カクテル療法」の製造販売を特例承認した。国内のコロナ治療薬は4つ目。重症化リスクがある軽症、中等症の患者に使う
2021年7月20日(火) 日経新聞朝刊
日本企業発のコロナ関連の薬が承認されたことは大変うれしく思います。ワクチンでは遅れていると言わざるを得ない中、治療薬で存在感を示して欲しいです。
これは、中外製薬の治療薬で、これまで中軽度の治療薬がなかったので期待されているようです。重症化を抑えることができれば医療機関の逼迫が緩和できます。この治療法は2種類の抗体を1回、点滴するとのことです。2種類使うので、「カクテル」が入っていると想像します。
中外製薬の親会社はスイスのロシュです。今回の開発はロシュも開発に協力しています。欧米の資本が入っているところの方がやはり動きが早いのでしょうか。
医薬品だけではなくあらゆる業種で純粋な日本企業もスピード感を持って動きたいですね。私も純粋な日本企業にいる一員として自分自身にも言い聞かせたいと思います。
新興勢、知財戦略に軸足
新興勢、知財戦略に軸足
アイムサイドビュー、出願100件特許などの知的財産を重視する動きがスタートアップに広がってきた、ソフトウェア開発のアイムサイドビューは創業1年目に100件の特許出願をした。
日経新聞社の「NEXTユニコーン調査」の上位50社を調べたところ、34件が特許出願。公開件数は20年に計234件と19年に比べ7割ほど増えた。
2021年7月21日(水) 日経新聞朝刊
大企業だけでなく、スタートアップも出願を強化しているという記事です。特許は登録されると独占的な権利が発生します。自社のコア技術を特許で守っておくと、他社が実施してきた場合に、その製品じたいを差し止めたり、実施による損害の賠償を請求することができます。これらは裁判所の判決が必要ですが、交渉によりライセンスを行うことで相手方から実施料を得ることもできます。
また、他社の特許を踏んでしまっている場合に、自社の特許のライセンスとバーターして双方でライセンスをし合うこともできます。
一方、特許はお金がかかります。日本だけの出願の場合は特許事務所を使った場合で1件30万円程度で出願できます。上記スタートアップが100件だとすると3000万円になります。これでもスタートアップには大きな出費でしょう。
しかし、特許はそのあともお金が掛かります。日本の場合は特許庁に審査をしてもらう際に審査請求料というものが1件で約15万円ほどかかります。もし、日本だけでなく海外でも特許を取りたい場合は翻訳等が必要になります。これはだいぶ高額になります。欧州と米国両方に出願する場合は100万円以上かかります。また、特許が登録されるとその権利を維持するために年金を納める必要があります。
これらの費用と特許の強さを勘案して、投資の価値があるかを考える必要があります。自社も他社も使わない特許はいくらとっても無意味です。
また、本記事では7割増えたとありますが、まだまだ日本のスタートアップの特許件数は絶対値が少ないと感じます。海外のスタートアップはもっと出願しています。自社で出願できない場合は他社から特許を買ってきて揃えます。IPO前に自社の価値を高めるために特許の流通市場から束で買い入れたりします。
米国でも事業をする場合は、米国だけでも特許を取っておきたいところです。
靴にも脱炭素の波
靴にも脱炭素の波
「緑の消費者」新市場生む米オールバーズは環境に配慮したものづくりで若者を中心に支持を集め、いま最も注目を集めるブランドの一つ。
2021年7月22日(木) 日経新聞朝刊
このオールバーズは2016年創業ですが、企業価値10億ドル(約1100億円)を見込むユニコーン企業に育ったそうです。Z世代などの若い世代はその上の世代とは消費にたいする考え方が大きくことなってきたことを実感します。
このオールバーズは生産にかかる二酸化炭素の排出料をタグに明記しているそうです。環境への意識が高い人は値段が少々高くても自分の考えにあった企業の商品を購入する傾向が顕著になっています。
二酸化炭素の排出はあらゆる企業活動で行われています。これをピンチととらえるのではなく、チャンスと考えて、考え方を世の中に発信したり、商品やサービスに反映していく必要があります。
近い将来、人間の吐く息の二酸化炭素量も測定されて、「こっちのルートを歩いたほうがハイ出力が少なくなります」なんて指示を出すナビゲーションが現れるかもしれませんね。
メルセデス、EV専業に
メルセデス、EV専業に
30年にも 電池工場などの5.2兆円独自動車大手ダイムラーの高級車事業会社、メルセデス・ベンツは22日、販売する新車を2030年にもすべて電気自動車(EV)にすると発表した。
欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、35年にエンジン搭載車を事実上禁止する法案を発表した。
2021年7月23日(金) 日経新聞朝刊
欧州の自動車メーカーのEVシフトが鮮明になってきたことが顕著に分かる記事です。25年には半分をEV・PHVにするとのことです。EVはバッテリーで走る純粋な電気自動車です。PHVはプラグイン・ハイブリッド車で、バッテリーでの走行とエンジンでの走行の両方が可能な車です。
トヨタなどが販売する通常のハイブリッド車もバッテリーを搭載していますが、PHVはこれよりも容量が大きいバッテリーを搭載しています。通常のハイブリッド車は少しだけエンジンでの走行を補助するイメージですが、PHVはバッテリーだけで走行が可能です。バッテリー+モータでの走行と、ガソリン+エンジンでの走行、両方の機構を備える分、どうしても重たくなります。そのため、PHVは過渡期のシステムなのかもしれません。
日本でもベンツを愛用している方は多くいます。2030年はほんの7年後です。その時点で買えるベンツの新車が電気自動車のみになった場合、どうなるのでしょうか。
日本は充電スタンドの普及が不十分です。一気に増やすのは難しいことを考えると今から来るべきEV時代に向けて計画的に増やす必要がありますね。
取捨選択、欧州が手動 ルールが決する競争力
取捨選択、欧州が手動 ルールが決する競争力
欧州委員会が4月に発表した、分類を意味する「タクソノミー」と呼ぶ数百㌻の資料。企業が手掛ける事業がどういう基準を満たせば「持続可能」と判別されるか示す。
2021年7月24日(土) 日経新聞朝刊
環境にやさしいといわれていたPHV(上記で解説)も、2026年以降は「持続可能」などの分類から外れてしまったそうです。日本の得意分野である商品が欧州で販売しにくくなる可能性があります。
車が製造されてから廃棄されるまでの二酸化炭素排出量は、ガソリン車で平均34トン、EVが24~28トン、PHVは約25トンと、環境性能が優れているにも関わらずです。
日本は欧米のルールに従うことが多かったです。PHVが外れた裏には日本の得意分野を外す意図があったのかもしれません。
ルールに従うだけでなく、作る側に回らないと言いなりになっていしまいますね。
企業の技術、開会式支える
企業の技術、開会式支える
2021年7月25日(日) 日経新聞朝刊
環境配慮、五輪通じ発信
夜空に立体的な「地球」を描いたドローン(小型無人機)ショーを手掛けたのは米半導体大手のインテル。エネルギー大手のENEOSホールディングス(HD)は五輪史上初めて、環境負荷が小さい水素で聖火をともした。
いよいよ始まりましたオリンピック。開催前は不安もありましがたが、始まるとつい、テレビを見て盛り上がってしまいます。ニュースの大部分が新型コロナのニュースばかりだったので、多くの報道が心躍る報道に変わるのは良いことだと思います。
開会式の1824台のドローンによるディスプレイには驚かされました。インテルが手掛けたのですね。このドローンは重さが340グラムしかないそうです。4枚の羽根で飛ぶシューティング・スターというドローンだそうです。高輝度LEDを4つ搭載しているそうです。あのような表示をするのは単に飛ぶだけではできないです。お互いの位置を保つための高度な技術が必要なはずです。
パナソニックはプロジェクションマッピング用のプロジェクターを提供しています。こちらも開会式を陰で支えるハイテク技術だったと思います。
今回は公式スポンサーになっている企業は、投資の効果を十分に得ることができなかったと思います。このような、技術を提供していることをもっと一般にも知ってもらい、投資した価値を少しでも出せるように報道をしてほしいものです。