毎日、新聞を読むの大変ですよね。ビズネス会話で使えるトピックを短時間で把握したい方、必読です。1日1つ日経新聞から記事をピックアップして関連知識を解説します。7日分で約7分で読めます。短時間で『知ってるビジネスマン』に変身しましょう! 今週はGAFAへの制限に関する記事が印象的でした。
【執筆】松本タケル〔ペンネーム〕 大手企業で特許戦略に携わる弁理士。法律だけでなくネットワークスペシャリスト、情報セキュリティスペシャリスト・エンベデッドシステムスペシャリストの資格を有しITにも精通。TOEIC 850点。趣味はスキルアップとビジネスに役立つ知識を収集すること。
*2021年6月14日(月) 日経新聞朝刊は休刊でした。
花き販売、コロナで明暗
花き販売、コロナで明暗
植木や切り花など花卉(かき)の2020年度の取引に新型コロナウイルスの影響が鮮明に表れた。
2021年6月15日(火) 日経新聞朝刊
植木や切り花を花卉(かき)ということを初めて知りました。
この記事を取上げたのは、新規ビジネスを考える際、株式投資の先を考える際の参考になると思ったからです。
花束などの切り花は冠婚葬祭が減ったことで減少した一方、観葉植物は在宅時間の増加に伴い取扱量が増加したそうです。
新型コロナの影響で当然と言えばその通りです。しかし、結果を聞かされてると納得しますが、あらかじめ予想するのは意外と難しかったりします。
1つの事象が次の事象にどう影響するかを空想することは、次どんな課題やビジネスチャンスが来るか考える新規ビジネスを見つける発想に似ています。また、予想があらかじめ構築できれば伸びそうな会社の株を買うことも可能です。
「風が吹けば桶屋が儲かる」の理屈を頭の中でうまく描ければ他社の一歩先を行くことができますね。
厚生省の医療人材紹介 マッチング率1%
厚生省の医療人材紹介
2021年6月16日(水) 日経新聞朝刊
マッチング率1% ワクチン接種巡り
新型コロナウイルスのワクチン接種で医師など医療従事者の確保にミスマッチが生じている。
厚労省が求人サイトを作ったが登録した医師、約5100人に対し、実際に仕事を紹介できたのは1%程度だそうです。
単に知られていないだけとは言えないと思います。5000人もの人が現に集まっていてマッチング率が1%なのは「2サイドマッチングの難しさ」を理解してないからだと私は思います。
とある、スタートアップ支援をされている方と話しをした際にこう言われました。「2サイドのマッチングは2つの会社を興すようなものだ」と。あるアセットを自社で持っていてそれを借りたい人に貸すのは一方向(ワンサイド)です。アセットを持っている誰かと、アセットを借りたい誰かをマッチングするのは2サイドで難しさが倍増します。
貸してが増えないと、借りてが増えません。両方を開拓しないとビジネスが伸びないのです。厚労省の件も、自分の労働力を提供する人と、接種のために医者を派遣してほしい自治体や職場の2つの相手がいます。
相当数の登録者がいれば、自治体等の要望に合う人が出やすくなるでしょう。自治体等が増えれば、登録者も働く機会が増えるので増加するでしょう。
この難しさを理解せずにサイトだけ作った結果が1%という数字に表れたのだと思います。民間の力を借りた方がいいと思います。
米競争政策 積極介入へ
米競争政策 積極介入へ
2021年6月17日(木) 日経新聞朝刊
米国で企業の独占や寡占を厳しく取り締まる機運が高まってきた。
FTC(連邦取引委員会)の委員長に競争政策の転換を訴える気鋭の研究者であるカーン氏を指名したそうです。
このブログでも巨大IT企業への課税などで活動に制限が掛かってきている記事を取上げてきましたが、いよいよ政府として本腰を入れ始めたのでしょう。
国際競争力が低下した1970年代から独占に対して厳しく対応しない政策を続けてきました。その結果、GAFAなどの巨大IT企業が生まれました。
イノベーションが加速した側面もありますがデータや富があまりにも集中しすぎて弊害が出てきているのも事実です。特定企業が強すぎるとそのサービスを利用する企業や個人の交渉力は弱くなります。
カーン氏はアマゾンのように「最終消費者の利益になる」として低価格を押し出している裏で納入業者がコスト圧力を受けておりこれを問題視しているそうです。
モノづくりの業界でも購入先と納入業者がいます。コストダウンはどこでも言われることですが、購入先の寡占が進み過ぎると奴隷のようになってしまいます。適正な競争環境を整えることは消費者にとっても重要ですね。
デジタル課税 苦渋の制度設計
デジタル課税 苦渋の制度設計
2021年6月18日(金) 日経新聞朝刊
巨大IT企業が念頭の共通課税ルールを巡り、主要7か国(G7)の合意の例外を設けて米アマゾン・ドット・コムを対象とする方向で関係国が調整に入った。
「大規模で高利益率の多国籍企業」を対象に10%の利益率を上回る部分について、少なくとも20%の課税権を市場国に与えると確認した。
上記ルールだとアマゾンは利益率が6・2%で10%を超えていないそうです。そこで、アマゾンの高利益率なクラウドサービスであるAWSに課税する方針にしたそうです。確かに、巨大IT企業は従来の製造業などと異なり税率が低いと言われています。無形資産が多いのが要因の1つです。既存企業から不平がでるのもうなづけます。
一方、特定企業を名指しで先進国がこぞって協議して税を課すやり方に少し恐ろしさを感じます。ITサービスは国境を瞬時に超えるので一国では解決できない訳ですが、フェアなルール作りをしないと恣意的に特定企業の競争力を奪うことができるようになってしまいます。
独占を許容する動きと、規制する動きは時代で行き来します。今は巨大ITの活動を制限する方向に力が働いているのでしょう。
オフィス再開、社員と綱引き
オフィス再開、社員と綱引き
2021年6月19日(土) 日経新聞朝刊
米IT感染収束をにらみ
アマゾン・ドット・コムは「週3日出社」を原則とすることを社員に伝えた。従来は「オフィスを中心とする文化への回帰」を原則としていたが、社員の声を取り入れ一部変更した。
あなたの会社はどうでしょうか。私は長期間のテレワークが続いています。新型コロナウイルス収束後の働き方をどうするかは世界中の企業が直面する課題でしょう。グーグルは社員の約6割が週3日ほどの出社を原則とするハイリッド型だそう。また、アップルは月火木を出社日とすると発表したところ、一部の社員から不満がでているそうです。
米IT大手の動きを見ていると、経営者はフェイスツーフェイスのコミュニケーションを重視していると言えます。これは私にとっては驚きです。IT先進企業こそテレワークの使いこなしで出社を減らしてくると思っていたからです。
この動きを見ていると、やはりオンラインだけでは今の技術では顔を合わせるのと同等の効果は得られないと考えているのでしょう。確かに、会議を定期的にしない人との偶発的なコミュニケーションが圧倒的に減ってしまっています。オンラインのバーチャルオフィスなども導入していますが顔を合わせることの代替にはなりません。イノベーションを起こす視点でも「直接会う」ことの効果は無視できないのでしょう。
テントウムシの滑らない足 微細な毛で接着
テントウムシの滑らない足 微細な毛で接着
2021年6月20日(日) 日経新聞朝刊
物材機構などが解明
足の裏の毛とガラスととの間で分子同士が引き合う力が働き「接着」した状態にあった。
カブトムシはガラス面を上がれないが、テントウムシは上がれるそうです。しかし、その接着の原理は分かっていなかったそうです。この度、物質・材料研究機構がその原理を解明したそうです。上記に引用したように分子同士の引き合う力が作用しているそうです。
このような原理の解明は単なる発見ではなく工業的に応用が可能です。実際に吸盤を使わずに滑りやすい面を移動するロボットの開発を目指すそうです。この記事から生命の神秘を感じました。テントウムシ自身が意識した訳ではないのにこのような進化を遂げるのは不思議なことですよね。