毎日、新聞を読むの大変ですよね。ビズネス会話で使えるトピックを短時間で把握したい方、必読です。1日1つ日経新聞から記事をピックアップして関連知識を解説します。7日分で約7分で読めます。短時間で『知ってるビジネスマン』に変身しましょう! 今週はウェブ漫画から医療、半導体と様々なトピックがありました。それぞれ簡潔に解説します。
【執筆】松本タケル〔ペンネーム〕 大手企業で特許戦略に携わる弁理士。法律だけでなくネットワークスペシャリスト、情報セキュリティスペシャリスト・エンベデッドシステムスペシャリストの資格を有しITにも精通。TOEIC 850点。趣味はスキルアップとビジネスに役立つ知識を収集すること。
時価総額の増加額
時価総額の増加額
2021年5月10日(月) 日経新聞朝刊
1年で見えた評価軸
時価総額が増えた企業を地域別にまとめると、「半導体」「電気自動車(
EV)」「コロナ後」の3つのキーワードが浮かぶ。
アップルの時価総額は1年余りで121兆円増えたそうです。桁違いです。また米エヌビディアの時価総額は40兆円を超え、インテルを抜いたそうです。
日本ではエムスリーが取り上げられていました。本日の日本の時価総額ランキングを見るとエムスリーは27位で約5兆円でした。
これは日立製作所の時価総額とほぼ同じです。日本の名門企業と肩を並べているのは大したものです。
エムスリーは日本最大の医療従事者専用サイトを運営するなど医療分野のDXにいち早く取り組んできた企業です。このサービスには全医師の9割以上が加入しています。
エムスリーの2020年度の売上収益(売上高から原価を引いたもの)は約1700億円と発表されています。営業利益は約580億円とのことで利益率の高さがうかがえます。
時価総額が近い会社は数兆円を売り上げる会社が並ぶ中、この売上収益で5兆円もの時価総額というのは市場から相当に評価・期待もされているといえるでしょう。
大手でもDXをうまくビジネスに取り入れられていない会社は多くあります。エムスリーを分析すると参考にできる部分も多いと思います。
韓国ウェブ漫画 世界派遣争い
韓国ウェブマ漫画 世界派遣争い
2021年5月11日(火) 日経新聞朝刊
ネイバーとカカオ、北米で同業買収
韓国ウェブ漫画、世界覇権争い ネット2強が同業買収: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ネイバーもカカオも両者とも韓国の企業です。ネイバーは元LINEの親会社です。カカオは日本で「ピッコマ」を展開しています。
ネイバーはユーチューブのように自由に投稿できる機能があありアマチュア作家も多いそうです。投稿者の中からプロ漫画家を選定しており、その年収は約3000万円にもなるそうです。
韓国勢がウェブの世界で勢力を拡大する中、日本の漫画は遅れています。私の息子は少年ジャンプをアプリで読んでいます。一見、デジタル化が進んでいるように見えますがマンガ自体は紙をそのままデジタル化したものです。コマ割りは紙媒体と同じです。スマホで読むには拡大が必要で読みにくいといえます。
ネイバーの提供する漫画がスマホに特化しており、フルカラーで縦スクロールになっています。日本の漫画界もスマホを意識したコマ割りを考える必要が出てくるでしょう。
小説の世界では日本に複数の投稿サイトがあります。「カクヨム」や「小説家になろう」などです。私も時折、短い物語を書いて投稿しています。だれでも投稿し読むことができます。広告を貼ることで収益化も可能になっています。これら小説投稿サイトは横書きです。スマホで読む人が多いため一般的なホームページに合わせてあります。一方、出版される小説は縦書きです。小説の世界でもスマホが無視できなくなってきていると感じますね。
台湾半導体、投資9割「域内」
台湾半導体、投資9割「域内」
2021年5月12日(水) 日経新聞朝刊
米欧、依存深まる恐れ
半導体不足が世界で深刻化するなか、米国や欧州が台湾の有力半導体メーカーの工場を誘致する動きが活発化している。
台湾半導体、投資9割「域内」: 日本経済新聞 (nikkei.com)
この記事を取り上げたのは、ビジネス的に成功して大勢力となったGAFAのビジネスモデルに転換期がきているのかもと感じたからです。
古くはインテルが台湾の力を借りて自社のCPUを拡大させました。インテルは90年代、台湾で安く大量のマザーボードが作れるように標準化やノウハウ共有をしてきました。
台湾のメーカーが安く大量のマザーボードを提供してくれれば、それに搭載されるインテルのCPUが爆発的に売れる形をうまく作りました。この記事自体にはGoogleもAppleも出てきませんが、アップルも近いビジネスモデルです。
自社は設計だけをして世界中から部品を集めて台湾で組立を行います。自社は工場をもたずに生産を委託しています。自社はiPhoneとそこで使われるストアをうまく連結させて莫大な利益を得る仕組みを作りました。インテルもアップルも新興国のコスト力を自社に取り込んで成長したといえます。
しかし、その依存が台湾に集中しすぎたことが世界的に問題になっています。あらゆる製品に搭載されるようになった半導体を台湾に依存しなければならなくなったからです。
言い換えると他者に依存して私腹を肥やすビジネスモデルのツケが来たともいえます。半導体製造はノウハウの塊です。簡単に外国に工場は作れません。状況は急には変化しないでしょう。日本も半導体不足で車メーカーなどがピンチになっています。日本も誘致を試みていますがうまくいっていません。かつては日の丸半導体が世界を席捲した時代が懐かしいです。
入国後待機「管理強化を」
入国後待機「管理強化を」
2021年5月13日(木) 日経新聞朝刊
自民要求、要請の実効性低く
厚労省慎重「憲法の制約」
変異型の新型コロナウイルスに対する水際対策の問題です。入国した300人と連絡がつかないそうです。田村厚生労働大臣は「憲法の制約上、移動の自由がある。判例でもでている」と言ったそうです。
本ブログでは政治のニュースを取り上げることはほとんどなかったのですが、納得できかねるので取り上げました。現在、変異株の比率が上がっているとニュースでも大きく取り上げられています。しかし、「島国である日本にどうやって変異株が入ってきたか?」について責任を問う報道がほとんどありません。
私の結論は簡単で「入国がザルだから」です。確かに憲法上の公共の福祉を理由に私権を制限するのは難しいのかもしれません。それならば対策は簡単で「日本に入れなければいい」です。入ってきてから制限できなけば、日本に来てもらうのをやめればいいのではないでしょうか。政府は「特段の事情」があれば入国許可をしているそうです。4月にはインドから約2000人を入国させているそうです。個別の事情を考慮して多くの国民を危険にさらすのは失策と思います。
働き方改革で新組織 IHI、ノー会議デー設定
働き方改革で新組織
2021年5月14日(金) 日経新聞朝刊
IHI、ノー会議デー設定
新型コロナの影響で在宅勤務が増えた会社も多いでしょう。私もそうです。1年前には週に1,2回は会社に行っていましたが、今年に入ってからは月に1回程度しか出勤していません。
家での仕事環境を少しずつ整えています。現在、2台ディスプレイ(27インチと32インチ)を同時使いしています。会社では20インチが1台だけです。その結果、会社に行った方が作業効率が落ちる現象が起きています。
会議はオンラインでなんとかなっています。会社に行ってもオンラインで会議をするなら、結局、家の方が快適という状態です。変わったのはそれだけではないです。明らかに会議が増えました。IHIさんの取り組みのように「ノー会議デー」を設定する気持ちがすごく分かります。
私の会社はだれでも他人のスケジュール表に会議を入れることがでるようになっています。オンラインの会議は会議室の移動がないので詰め詰めで入れることができます。そのため、日によっては「トイレに立つ間もなく会議」という日もあります。まとまった時間がないと集中して資料作成などができません。私は自己で対策として予定表に1日、1.5時間ほどまとまった時間を入れておくようにしています。それでもそこに会議が入れられる場合もあります。
「1日会議なし」は大胆な気がしますが、それくらいの取り組みが必要なのも理解できます。
出前館、稼ぐ力戻るか
出前館、稼ぐ力戻るか
2021年5月15日(土) 日経新聞朝刊
ウーバー対抗かさむ投資
出前館の株価は20年12月末比で4割下落している。売上は大幅に伸びているが人件費や広告宣伝費が膨らみ赤字になっている。
ウーバーイーツの配達員は直接雇用のないギグワーカーです。一方、出前館はアルバイトを直接雇用しています。これは配達の品質を担保するためです。その結果、人件費がかさんでいるのでしょう。
ウーバー方式か出前館方式かどちらが勝つかは分かりません。ギグワーカーの配達品質があまりに悪いとなれば、少々お金が増えてもしっかり配達してほしいと思う人が増えるでしょう。一方、少々、配達が荒くても費用に見合うのであれば配達費は低い方がいいと思う人が多くなるでしょう。
2つの会社の異なるアプローチは他の業界の働き方にも影響を与えるそうです。要注目です。
欧米間データ移管 逆風
欧米間データ移管 逆風
2021年5月16日(日) 日経新聞朝刊
フェイスブックの異議棄却
米フェイスブックが欧州統括拠点を置くアイルランドの高等裁判所は14日、データ移管を禁じた仮命令に対する同社に異議を棄却した。
今回の棄却でほかの米国企業も個人データを米国に送れなくなりターゲット広告などの事業に影響が出る可能性があるとのことです。
EUは2018年にGDPRを施行して域外へのデータの移管を厳しく制限しています。GDPRはGeneral Data Protection Regulationの略でEU一般データ保護規則と訳されています。
個人情報を保護対象とし、違反すると大きな制裁金が課せられます。制裁金は最大で2,000万ユーロまたは全世界年間売上高の4%のいずれか高い方となっています。企業によっては数十億円規模になり得ます。
EUと日本は相互に「十分性認定」がされているので煩雑な手続きなしでEU域内から個人データを持ち出せます。ただし、第三国への提供には、移転先の国が十分性認定を受けている必要があるなど留意すべき点があります。