毎日、新聞を読むの大変ですよね。ビズネス会話で使えるトピックを短時間で把握したい方、必読です。1日1つ日経新聞から記事をピックアップして関連知識を解説します。7日分で約7分で読めます。短時間で『知ってるビジネスマン』に変身しましょう!
【執筆】松本タケル〔ペンネーム〕 大手企業で特許戦略に携わる弁理士。法律だけでなくネットワークスペシャリスト、情報セキュリティスペシャリスト・エンベデッドシステムスペシャリストの資格を有しITにも精通。TOEIC 850点。趣味はスキルアップとビジネスに役立つ知識を収集すること。
*PEST分析(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術))のいずれに該当するかを明示しています
製造業のサービス化 成長にらみ付加価値創造
製造業のサービス化
2021年9月6日(月) 日経新聞朝刊
成長にらみ付加価値創造
日本の製造業で、モノを作って売り切るのではなく、付随サービスを提供して事業展開する動きが広がっている。
【Economy(経済)】産総研、明治大学、13の企業が参加して「製造業サービス化コンソーシアム」として活動しているそうです。
企業は東レ、マツダ、三菱重工などが参加しています。コンソーシアムを主導されている産総研の持丸氏によると「ユーザーがサービスにお金を出してくれないのはメーカーのいいわけでしかない。何が阻害しているかは共通する要因が多い」とのことです。この点を明かすために、1000社を対象に定点観測するそうです。
日本の製造業は長らく、いいものを作りさえすれば売れると考えて製品を市場に出してきました。しかし、iPhoneを買った後にアプリを使うことでアップルが儲かる、音楽配信の定額サービスを利用するとさらにアップルが儲かる、のようにハードウェア販売後に設けるビジネスモデルを作った会社が大きな売り上げ、利益を上げています。
日本の製造業が得意でない部分をこのコンソーシアムで検討しているといえます。私もいくつものサブスクリプションのサービスを使っていますが、継続的に価値がないと感じたものは退会しています。
売ったあとに途切れずに価値を出していくことは大変です。自分ならどんなサービスが欲しいかを空想することが、自分の携わるビジネスのモデルを考えることにつながりそうです。
半導体、省エネ素材で進化 炭素化合物やダイヤ活用
半導体、省エネ素材で進化
2021年9月7日(火) 日経新聞朝刊
炭素化合物やダイヤ活用
シリコンが長く使われてきた半導体の基礎材料で新素材の開発・導入が進んできた。
【Technology(技術)】電気自動車(EV)大手のテスラが向けの新しい半導体を採用したのを皮切りに技術革新が進みそうだという記事です。このパワー半導体は炭化ケイ素(SiC)を基板に用いたものです。このSiCはこれまでの半導体より消費電力を半分以下にでき、放熱効果も優れているので小型化が可能となります。その反面、量産の難しさがあったのですが、実用段階に入ってきているようです。
SiC製のトランジスタを初めて量産したのは日本のロームだそうです。ロームも生産能力を引き上げる計画です。半導体の世界には、18カ月~2年で性能が2倍になっていくという、「ムーアにの法則」というものがあります。しかし、半導体の微細化が進み、限界に近いと言われています。
この法則の通りに技術が進んでいくには、素材自体から見直す必要がありそうです。半導体はあらゆる製品のキーパーツです。IoT時代になると半導体が入らない製品はなくなります。基礎研究で日本の存在感が低下しています。一方、半導体製造装置は日本に有力企業があります。是非、この分野で日本も存在感を出していただきたいです。
「エイジテック」新興勢がけん引
「エイジテック」新興勢がけん引
2021年9月8日(水) 日経新聞朝刊
クラウドで高齢者支援
高齢化社会の課題をクラウドなどデジタル技術で解決する「エイジテック」を手掛けるスタートアップが増えている。
【Technology(技術)】世界で最も早く高齢化社会が進む日本の課題にスタートアップが取り組んでいます。役所に行かずに相続手続きをする、不動産の名義変更をするです。高齢者にもスマートフォンが普及しています。私の母も高齢ですが、LINEを使いこなしています。
高齢者はスマホが苦手と言い切れなくなってきているでしょう。そこに商機があると思います。ネットでの買い物支援や、オンライン受診などを支援するサービスもでてきているそうです。
中国などの人口の多い国でも人口減少が始まりつつあります。高齢化は世界的な課題になります。日本でいち早くサービス化して磨きあげれば、海外にそのサービスを展開することも夢ではありません。Uberが世界を席巻したように、日本発のエイジテックが世界を席巻する日がくるといいなと思います。
ホンダ・GMが自動運転実証 相乗り事業 20年代半ばに
ホンダ・GMが自動運転実証
2021年9月9日(木) 日経新聞朝刊
相乗り事業 20年代半ばに
ホンダは8日、米ゼネラル・モーターズ(GM)やGM子会社と連携し、自動運転の実証実験を9月中に国内で始めると発表した。
【Technology(技術)】まずは、ホンダは9月中に栃木県内の研究所で走行実験を行います。その後、公道で走らせる計画です。
そして、実験を生かして20年代半ばにライドシェアや無人タクシーなどの事業を始めるそうです。
次世代移動サービスはMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)と呼ばれています。自動運転になどの技術が進展すると移動に関して様々なサービスが現れます。
ウーバーの発展版のようなサービスが多数でてくるでしょう。そうなると、サービスを行うサービサーが直接、ユーザーとの接点をもつことになります。
既存の車メーカーはサービサーに車を納める役割になってしまう可能性があります。その懸念があることから、車メーカー自身がサービスに乗り出そうとしています。
今回のホンダの取り組みはその1つといえます。これから出てくるであろう新サービスの裏では企業間の激しい駆け引きが発生するのでしょう。
マグロなど高級魚、培養肉に
マグロなど高級魚、培養肉に
2021年9月10日(金) 日経新聞朝刊
米新興、来年に発売
乱獲の水産資源を補う
マグロやクエといった高級魚など水産資源を細胞培養でつくる「培養魚類」が2022年に実用化する。
【Technology(技術)】世界の水産資源の9割が2015年時点で乱獲により持続可能な上限まで漁獲されているとのレポートがあるそうです。
そのような乱獲の救世主となりうる技術です。タンクで魚の細胞を培養するそうです。
日本規格協会(JSA)によると代替肉はさ3種類あるそうです。①植物成分から作られたもの、②微生物の酵母の細胞から抽出したたんぱく質で作られたもの、③動物の細胞から作られたもの、です。
今回の記事は③です。近大が実用化した完全養殖マグロも一見、水産資源を守るように見えますが、マグロの体重を1kg増やすために、エサとなる魚が13kg必要だそうです。
こう聞くと、代替肉の有用性も理解できます。個人的に懸念するのは、培養するもとの細胞が良くないものだったら?という懸念です。専門家ではないのですがちょっと心配です。
あと、培養肉は細胞を増殖しただけなので、筋肉や血管がありません。触感などが本物の魚の肉と同じにならないということです。
近未来では、多くの食物がこのようなテクノロジーで作られる時代がくるかもしれませんね。安全性や人の理解などクリアすべきハードルはまだ多い気がします。
パナソニック 米で家事支援
パナソニック 米で家事支援
2021年9月11日(土) 日経新聞朝刊
元グーグル幹部主導
パナソニックは10日、利用者の家事などを支援する「コンシェルジュサービス」を米シアトルで始めたと発表した。
【Economy(経済)】家電などのハードウェアを売る印象が強いパナソニックですが、サービス分野に乗り出そうとしています。
元グーグルの幹部だった松岡洋子氏が、2018年にパナソニックに入社して先導して作ったサービスだそうです。
月額149ドル(約1万6千円)で買い物代行や家族旅行の計画立案などをアプリで依頼すると、専任スタッフが手助けするそうです。
日本では未定でシアトルから開始とのことです。この記事を読む限り、パナソニックの家電などを直接、売ったりするサービスではなさそうです。
社内だけで検討するとどうしても自社の資産をベースに考えてしまいます。このように、外から来た方が思い切ったことを開始することで社内が改革されていく側面があるのかもしれません。
経営の神様と言われた松下幸之助が創業したパナソニック。最近はソニーの後塵を拝しています。利用者の困りごとを拾い上げ、ハードウェアだけでなくサービスも融合したビジネスで世の中をより良くしてほしいですね。
アップルのアプリ訴訟 一審判決は「痛み分け」
アップルのアプリ訴訟
2021年9月12日(日) 日経新聞朝刊
一審判決は「痛み分け」
課金見直し命令/独占は認定せず
米連邦地裁はアップルのアプリ配信事業が独占にあたるとするエピック側の主張を退けた一方、課金ルールについては反競争的だとして見直しを命じた。
【Politics(政治)】人気ゲーム・フォートナイトの開発元のエピックゲームズが課金ルールについてアップルを訴えていた訴訟の第一審判決です。
この判決の手前で、アップルは電子書籍などの課金については譲歩しましが、最も大きな利益を上げているゲーム分野については譲歩していませんでした。
今回は独占までは認められないという結果になりました。しかし、アップルの決済手段に限るのは反競争的だと見直しを命じられており、今後の動向が注目されます。
フェイスブック、アマゾンなどGAFAへの風当たりが強くなっている流れは要注目です。アメリカは、日本が世界を席巻した1980年代以降、独占について寛容な政策をとってきました。
その結果、GAFAのような巨大企業を生み出すことができました。現在は、その巨大化の弊害を是正する政策に移行しつつある印象です。1つの訴訟とみるのではなく競争法適用の過去30年の考えが転換されるかもと思って注視することが必要です。