毎日、新聞を読むの大変ですよね。ビズネス会話で使えるトピックを短時間で把握したい方、必読です。1日1つ日経新聞から記事をピックアップして関連知識を解説します。7日分で約7分で読めます。短時間で『知ってるビジネスマン』に変身しましょう! 今週はAI、5Gなどのハイテク関連の記事が印象的でした。
【執筆】松本タケル〔ペンネーム〕 大手企業で特許戦略に携わる弁理士。法律だけでなくネットワークスペシャリスト、情報セキュリティスペシャリスト・エンベデッドシステムスペシャリストの資格を有しITにも精通。TOEIC 850点。趣味はスキルアップとビジネスに役立つ知識を収集すること。
*PEST分析(Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術))のいずれに該当するかを明示しています。
ビジネスモデル問う米独禁当局
ビジネスモデル問う米独禁当局
バイデン大統領が米独禁政策に改革に乗り出した。まずは採算より市場シェアや顧客の獲得を優先し、その果実として後から安定的に利益を得る「損して得取れ」のビジネスモデルを独禁法上の違法行為である「略奪的価格設定」だと断じた。
2021年7月26日(月) 日経新聞朝刊
【Politics(政治)】FTCの委員長にamazonと敵対するカーンさんが就任しました。バイデン大統領の政策に合致したのでしょう。記事によると、amazonのサービスであるプライムは会費収入をはるかに超えるコストがかかっているそうです。これは損をしても別で稼ぐための顧客獲得の目的といえます。
しかし、競合を排除するために無料や定額で顧客を呼び込む戦略は定番といえます。これに対し、カーン氏はいくら経営戦略でもトップ企業、大資本が競争阻害や競合排除を意図して用いた場合には違法性を帯びることがあると指摘しているとのことです。
よほどの寡占にならないと上記の考え方が適用されないと考えますが、あらゆる産業で同様の集客戦略がとられる中、自社がやり玉に上がらないかヒヤヒヤする企業も多く出そうですね。
電動航空機、「離陸」近づく
電動航空機、「離陸」近づく
経済回復・脱炭素、追い風
エンジンの代わりに電気の力で飛ぶ電動航空機の実用化が近付く。トヨタ自動車が出資する米スタートアップのジョビー・アビエーションは時速320㌔で240㌔以上飛ぶ5人乗りの機体を開発し、23年にも商業飛行を始める。
2021年7月27日(火) 日経新聞朝刊
【Technology(技術)】空の世界でも脱炭素の影響で、電動化が進んでいるようです。航空機が出す二酸化炭素は世界の排出量の約3%、航空機が1人の乗客を運ぶ際に出る二酸化炭素はバスの2倍、鉄道の6倍だそうです。長距離の飛行機の電動化はまだ先になりそうですが、小型、短距離の航空機は電動化が進むのかもしれません。
近未来では小型の電動航空機が車の代わりに使われるようになるのでしょう。もしかしたら、一気に移動が陸から空に変わるかもしれません。開発の中心が欧米になっているので、日本も存在感を出してほしいものです。
ローカル5G、58団体に
ローカル5G、58団体に
2021年7月28日(水) 日経新聞朝刊
免許申請・取得、周波数拡大で倍増
地域限定の高速通信規格「ローカル5G」が幅広い業種で使われ始めた。住友商事は工場の検査で実証実験を開始。凸版印刷は360度映像による仮想旅行を検討する。
【Technology(技術)】ローカル5Gは総務省の免許を得ると、敷地内で独自に無線通信網が構築できます。5Gの高速、低遅延な通信のメリットを工場などの限られたエリアで使用することができます。
用途は無限にあります。その一例がこの記事にある産業用ロボットの遠隔操作などです。ローカル5Gは3.6GHz~6GHzの「サブ6」と呼ばれる周波数帯を使います、20年12月に総務省がこのサブ6を解禁したことで免許の申請が増えているそうです。この先、AIやVR・ARなどの革新的な技術との掛け合わせで、新しい用途がどんどん開拓されていくでしょう。
一方、導入のコストが高いことがデメリットです。基地局1基の初期投資は1億円にもなるそうです。遅れていると言われている日本のデジタル化の起爆剤になってほしいですね。
追跡広告、見直し機運
追跡広告、見直し機運
2021年7月29日(木) 日経新聞朝刊
サッポロビール予算7割減
ネット広告閲覧履歴などに基づき広告を出すターゲティング(追跡型)広告の見直しが日本でも広がり始めた。個人データを使わない広告の採用企業も増えている。
【Society(社会)】ターゲティング広告は、ユーザのネット上の検索履歴などに基づいてその人を狙った広告を出すサービスです。個人情報保護の機運の高まりから、この広告が問題視されつつあります。グーグルは23年にクロームブラウザで、サードパーティークッキーと呼ばれるデータ共有の仕組みを制限するとのことです。
サッポロビールはネット広告に占める追跡型の比率を1/3にするとのことです。企業が社会的責任を果たすことが求められる時代になっています。ターゲット広告を使っていること自体が一般消費者にマイナスの印象を与えることになる時代が来るのかもしれません。
昨年、沖縄に本社を置くオリオンビールが、アルコール度数の高いストロング系のチューハイの販売を中止したというニュースがありました。アルコール度数が9%程度と高く、手軽に酔えるため人気があったのですが、アルコール中毒などの健康面を重視しての判断でした。
その商品を求めるユーザーがいるにも関わらず商品の販売を中止する、このような判断は過去には例が少ないのではないでしょうか。しかし、今後の企業活動では「たとえユーザが求めていても社会的責任が果たせないならやめる」という経営判断ができる会社が評価されるのかもしれません。
「エッジAI」実店舗を変革
「エッジAI」実店舗を変革
2021年7月30日(金) 日経新聞朝刊
売り場画像、その場で解析
クラウドからエッジへー。人工知能(AI)の活用の舞台が利用者に近い端末(エッジ)に広がってきた。ロッテが来店客の購買行動を分析して売り上げの増加につなげるなど、小売りの現場に変革をもたらしつつある。
【Technology(技術)】クラウドによるAI分析は、ネットワークでデータをクラウド上のサーバに送信して分析する技術です。一方、エッジAIはカメラやなどの端末側でデータ解析をする技術です。
エッジAIには、端末側でリアルタイムに分析ができる、データをセンターに送信しなくていいなどのメリットがあります。エッジAIで売り場を分析する理由はそれだけでなく、プライバシー保護の側面もあります。カメラで撮った画像は、その場で分析して破棄することでお客さんに対して安心感を与えることができます。行動分析をして陳列の工夫などに生かす以外に、万引き防止のために行動監視をする用途も考えられているそうです。
計算能力はエッジより、クラウドの方が勝っています。しかし、半導体技術の進展でエッジでも十分な分析ができるようになっています。端末で処理をするか、サーバーで処理をするかは時代の進展で行ったり来たりします。エッジで処理できない用途ではクラウド処理になるのでしょう。分析に必要な計算能力と、半導体技術の進歩、通信コスト・速度の進化でどちらで処理するかが決まるといえます。
巨大IT、異例の88%増益
巨大IT、異例の88%増益
2021年7月31日(土) 日経新聞朝刊
寡占批判、成長に影も
巨大IT企業の利益が急増している。29日までに2021年4~6月期決算を発表したアップルなど主要5社の純利益を合計すると748億9900万㌦(約8兆2000億円)となり、前年同期比で88%増えた。
【Economy(経済)】主要5社はアルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、フェイスブック、アマゾン、アップルです。四半期で純利益が8兆円以上という想像もできないほどの利益を上げています。前年同期比88%増なので、約2倍ということです。5社の2021年4~6月期の売上合計は3316億2300万㌦で、約36兆円にもなります。単純に計算すると純利益率が約23%となります。この数字は製造業では出すことができません。
IT産業が以下に投資に対する利益が大きいかが伺えます。一方、アマゾンの売り上げの伸び率は新型コロナウイルスのワクチン普及に伴い鈍化しつつあるとのことです。アマゾンの4~6月期の売上高は約12兆3000億円です。AWSの総売上高に占める割合は13%ですが、営業利益率が30%(同年1~3月期)と非常に高いことが知られています。
「あなただけ」の情報で孤立
「あなただけ」の情報で孤立
2021年8月1日(日) 日経新聞朝刊
判断偏る恐れ、視野広げてこそ
デジタル技術は一人ひとりの好みに合う情報を提供できるが、自分の価値観にそぐわない情報に触れる機会を減らす反動とと背中合わせだ。
【Technology(技術)】このように新たな分野に関心をもつ機会が奪われることを「フィルターバブル」と呼ぶそうです。現代では、自分では選ぶことができないフィルターになってしまっています。
東京大学では、今後、閲覧履歴から好みのジャンル以外にも興味をもてそうな記事を紹介する実験に乗り出すそうです。
このフィルターバブルは、私自身もずっと気になっていたことです。閲覧履歴から自分が好きそうな記事があからさまに出ます。確かに、興味のある分野でしらないニュースなどを知ることができて助かる場合も多くあります。その反面、「偏っているな」とよく感じます。
このブログで日経新聞の記事を紹介していますが、私は新聞の一通りの見出しに目を通して記事を選択しています。全体を眺めることで、何もフィルターが掛からず幅広い記事に触れることができるからです。皆さんも、ご自身で「検索結果に依存しない情報に触れる方法」を検討してみてはいかがでしょうか。